筋力トレーニング(Resistance Training)の初期の段階で訪れる身体の反応は、皆一様とされます。
中でも筋のボリュームを増やしたり、代謝を高めたり、肌のターンオーバーを活性化させるホルモンの影響はトレーニングを行う前よりも著しく変化する事が分かっております。
現在、筋力トレーニングによって分泌されるホルモンには、100種類以上が確認され、各器官から分泌される事で大きな変化をもたらします。
ホルモンが分泌される内分泌器官とホルモンの種類を下記にまとめます。
脳下垂体前葉(Anterior pituitary)
脳下垂体は、頭蓋骨の中で脳の下にぶら下がるように存在する内分泌器官で、前葉と後葉の2つから構成されます。
特徴として、体内に存在する内分泌器官で特段多くのホルモンを分泌し、前葉は前葉自体の細胞内でホルモンを作ります。
成長ホルモン(GH=Growth Hormone)
直接的に器官に働きかける仕組みと間接的に器官に働きかける仕組みと2通りあります。
肝臓からIGF-Iを分泌させ、軟骨細胞の増殖と分裂を促し骨成長を促進、またタンパク質合成による筋の成長を促す作用があります。
他にも炭水化物やたんぱく質などの栄養素の代謝を促進し、脂肪組織から遊離脂肪酸を放出させエネルギーとして利用する体脂肪の動員促進作用があります。
副腎皮質刺激ホルモン/ACTH
ACTH(Adrenocorticotropic hormone)は、副腎皮質を刺激し、糖質コルチコイドなどの副腎皮質ホルモンを分泌します。
副腎皮質ホルモンは、炎症の抑制、炭水化物の代謝、たんぱく質の異化、血液の電解質レベル、免疫反応などを担っています。
卵胞刺激ホルモン/FSH
FSH(Follicle stimulating hormone)は、卵巣に対して卵胞の成長を刺激し、精巣に対しては精子形成を刺激します。
黄体形成ホルモン/LH
LH(Luteinizing hormone)は、卵巣に対し黄体形成を刺激して、精巣に対してはテストステロン分泌を刺激します。
甲状腺刺激ホルモン
甲状腺を刺激し、チロキシンなどを分泌させます。
脳下垂体後葉(Posterior pituitary)
後葉は、前葉と違い視床下部でホルモンを作り、軸索を通じて分泌を行います。
視床下部は脳の一番奥の下垂体の真上に位置し、体温、食欲、睡眠、体水分量、塩分量を調整しています。
抗利尿ホルモン/ADHアルギニンパンプレシン
ADH(Antidiuretic hormone)は、腎臓での尿生成を抑制し、血管平滑筋を収縮させて血圧を上げる働きを持ちます。
特にアルギニン・バゾプレシン(Agrinine vasopressin)が分泌され、抗利尿作用として働きます。
具体的に腎臓の尿細管に作用し、体液の喪失を防ぎ、脱水やショックなどの循環血漿量が減少した際に体液を保持する働きを持ちます。
オキシトシン/OXT
OXT(Oxytocin)は、大きく2つの作用があり、「末梢組織で働く作用」と「中枢神経で神経伝達物質としての作用」があります。
末梢組織では、平滑筋の収縮に関与する為、分娩時の子宮を収縮させたり、乳腺の筋線維を収縮させ乳の放出を促す働きを持っています。
甲状腺(Thyroid gland)
喉ぼとけの下にある蝶のような形をした臓器で、身体の新陳代謝を促進するホルモンを分泌します。
重さが15~20gほどになり、4~5cm程度の臓器です。
チロキシン/Thyroxine
全身的にミトコンドリアでの有酸素性エネルギーの代謝活性を高めることから代謝量の制御に関わっているホルモンです。
カルシトニン/CT
CT(Calcitonin)は、骨へのカルシウム沈着を促し、血中のリン酸カルシウム濃度を下げる。
副甲状腺(Parathyroid)
甲状腺の裏側にある米粒大の臓器であり、名称に「副」とありますが、甲状腺とは別の臓器です。
「上皮小体」とも呼ばれ、甲状腺の裏側に左右上下1つずつ、合計4つ存在します。
位置や数には個人差があり、5つ以上の場合や3つの場合もあります。
副甲状腺ホルモン
骨からのカルシウム遊離を促す。骨吸収の活性化。
膵臓(Pancreas)
お腹のやや上の方で胃の後方にある、20cmていどの細長い臓器です。
十二指腸に囲まれており、背骨に近い側の膨らんだ「頭部」、中央の「体部」、背骨から遠い側の「尾部」で構成されています。
インスリン/Insulin
血糖の細胞への取り込みとグリコーゲン合成を刺激する。
筋ではタンパク質合成を促す。
グルカゴン
肝臓でのグリコーゲン分解を刺激し、血糖値を上げる。
腎臓(Kidney)
原尿を作る臓器であり、心臓から送り出される血液の約1/4が流れ込みます。
腎臓で濾過された原尿は1日約150リットルと言われ、尿細管を通り必要な物質は体内に戻り、不要な物質は尿として膀胱に送られます。
レニン
血中のアンギオテンシンを活性化して尿生成を抑制し、血圧を上げる。
副腎皮質(Adrenal cortex)
副腎の外層部分で、副腎全体の80~90%にあたる黄褐色をした内分泌性組織です。
外面の皮質層である「球状層」、中間の皮質層である「束状層」、深層の皮質層である「網状層」の3層に分かれ、それぞれの組織でホルモンが作られます。
グルココルチコイド/コルチゾール、コルチゾンなど
グリコーゲン、タンパク質、脂質などを分解して糖を生成し、血糖値を上げたり、エネルギー基質として供給したりする。
コルチゾールは、腎臓の上にある副腎と呼ばれる臓器から分泌されるホルモンになり、肝臓での糖新生、筋肉からのたんぱく質代謝、脂肪分解の促進、免疫抑制や抗炎症作用になります。
糖新生は肝臓で糖を作り出す働きがあり、私たちのエネルギーの利用になくてはならない働きになります。
また糖が枯渇した場合、脂肪やたんぱく質を効率よくエネルギーに変換する働きもコルチゾールは担っており、人体にとってなくてはならない必須のホルモンです。
免疫抑制については細胞内でステロイド受容体と結合し、マクロファージの活性を抑制、炎症反応に深く関与しているサイトカインであるインターロイキンー1を抑制する事が知られています。
抗炎症作用については、上述したマクロファージの貪食能を抑制する事で、それらが産生する炎症性サイトカインが起こす炎症を止める働きがあります。
塩類コルチコイド
腎臓での水の再吸収を促進し、尿の生成を抑制する。
副腎髄質(Adrenal medulla)
副腎の深層に位置し、副腎皮質に包まれている内分泌組織です。
副腎全体の25%未満であり、アミノ酸の一種であるチロシンを原料としてホルモンを生成します。
アドレナリン・エピネフリン
心収縮力、心拍数を高める。グリコーゲンや脂質の分解を刺激し、血糖値を高める。
エピネフリンは、脂質と炭水化物の分解を促して身体を動かすエネルギーを作り出す働きをします。
具体的にATPと呼ばれる物質になり、筋肉が収縮をする為になくてはならない物質になります。
また、多数の神経細胞の集まりである脊髄と脳にも影響を与え、より大きな力を出せるような働きを活性化します。
短時間で速く走るスプリンターや一瞬で爆発的なパワーを出す重量挙げなどの協議ではエピネフリンが大きな関りを持ってきます。
ノルアドレナリン/Noradrenaline・ノルエピネフリン
大きく3つ、脳内での神経伝達物質、自律神経の神経伝達物質、副腎髄質のホルモンとして役割を持っています。
痛みや痒み、寒暖差や人間関係のストレスによって分泌が促され、集中力を高めたり積極的な行動を起こす働きがあります。
肝臓(Liver)
人体で最も大きな臓器であり、右肋骨のあたりに存在する臓器です。
体重の1/50を占め、たんぱく質の合成・栄養の貯蔵、有害物質の解毒・分解、短銃の合成と分泌を担っています。
インスリン様成長因子ーⅠ(IGF-Ⅰ)
筋や骨でのたんぱく質合成を刺激し成長を促す。
精巣(Testis)
精巣は睾丸とも呼ばれ、陰嚢の中に左右一対で存在する直径4~5cm程の臓器です。
精子が作られ、男性ホルモンの分泌を担います。
アンドロゲン/テストステロン
男性の性徴発現を刺激する。筋に対してはたんぱく質合成を促す。
テストステロンは男性ホルモンの一種でステロイドホルモンに分類されます。
共通の前駆体から作られるステロイドホルモンですが、筋の合成を高める事によって身体の発達・育成に大きく関わってきます。
減少すると過度な疲労感や倦怠感、不眠や肩こり、男性機能の低下などを引き起こします。
卵巣(Ovary)
子宮の両側に一対ずつ存在する楕円形の臓器で、卵子を作り出します。
卵胞ホルモンと呼ばれる「エストロゲン」や黄体ホルモンと呼ばれる「プロゲステロン」を分泌する内分泌器官です。
エストロゲン・エストラジオールなど
女性の性徴発現を刺激する。筋に対してはたんぱく質合成を抑制する。
プロゲステロン
女性の性徴発現を刺激したり、妊娠を維持させたりすることに働く。
心臓(Heart)/心房(Atrium)
心臓は4つの中空になった空間があり、環状溝を境にして、左右上方にあるのが心房です。
右心房は上・下大静脈や冠状静脈洞から静脈血を受け入れ、左心房は肺からの動脈血を受け入れそれぞれ心室に血液を送り働きを持っています。
心房性利尿ホルモン(ANP)
腎臓での尿生成を刺激し、血圧を下げる。
【参照・引用】