スポーツからみる疲労と睡眠の改善

大きな大会になるとアスリートは身体を酷使する事が余儀なくされます。

それはスポンサーや観衆が求める大会に応えようとするアスリートの宿命なのかもしれません。

サッカーを1つみても競技連盟が複数あり、それぞれで世界大会を行います。

・UEFA(Union of European Football Associations)=欧州サッカー連盟
ユーロ大会など

・FIFA(Fédération Internationale de Football Association)=国際サッカー連盟
ワールドカップやクラブチーム対抗の世界選手権

現代の科学によって疲労や睡眠を効率よく行う方法が模索されています。

測定機器の進歩と共に微小な脳波の測定やIoTによって睡眠の計測が行えるようになり、選手のコンディションに大きな影響を与えています。

電気刺激による疲労回復

神経心理学者のエリザベッタ・ジェーダは「経頭蓋直流電気刺激」を用いて自転車競技アスリートの疲労回復について研究をしています。

もともと多発性硬化症などの神経症で使われていた方法であり、ヘッドギアで電極を配置し神経の活性化を促す方法になります。

具体的に脳の運動野と感覚野を刺激し、脳に身体が疲れている事を素早く認識させます。また同時に大腿部などのマッサージを行い、大きな疲労の後に発生する炎症を抑えるメカニズムを刺激します。

また選手の感情が疲労回復を妨げる事が分かっており、試合前後であれこれ思考する事が妨げるようになると分かっています。経頭蓋直流電気刺激では、感情を抑制する事が出来、結果として睡眠の質が上がる事が分かっています。

脳への電気刺激によりパフォーマンスが1%向上する事が実験から判明し、自転車競技で言えば7位の選手を1位に押し上げるレベルとされています。

Le Tour de France
自転車競技
 

IoTによる睡眠管理

ヨットレースのヴァンデ・グローブは単独・無寄港で世界を一周する競技です。

どのヨットが早く到着するかを競うレースであり、30年前までは1位と2位の差に数日ありましたが現在では数時間の差となっています。

約2カ月続く競技で選手は不眠不休ともいえる操縦をし、時には24時間寝ずの晩が続くこともあります。常に装置を調整し、仮眠を取りながら進む為、状況が良ければ1時間~1時間30分のまとまった睡眠が取れ、そうでなければ数分から十数分という短い睡眠を繰り返します。

睡眠と疲労について研究しているリトラル・コート・ド・パール大学のレミ・ウルディエルは睡眠管理ツールを開発し、睡眠不足をテクノロジーで管理し、客観的な指標によって選手に警告を出して知らせる方法を研究しています。

従来、選手は自身の睡眠不足を感覚で察知し、競技を行っていましたが極度の睡眠不足では冷静な判断が出来ず、幻覚がみえ脳の機能が著しく低下します。

装置は事前に選手の詳細な分析を行います。運動中の呼気を分析に酸素や二酸化炭素の量、エネルギー消費や呼吸数、心拍数を計測します。それらの情報によって選手が競技中に寝ている状態か起きている状態かのどちらに近いかを判別し、睡眠や疲労の度合いを計測し、適切なタイミングで睡眠を取るよう促します。

 

 

Vendée Globe
ヨットレース
 

最後に

科学技術の進歩と共にアスリートの能力を極限までに高める事が出来るようになりました。

しかし、だからといってアスリートが科学技術に頼って獲得した勝利という事ではありません。

両者が揃う事によって人体の能力を極限まで高めるという事が出来るのです。