深い睡眠を知る(睡眠段階1~4)

従来、睡眠時間は8時間が必要であるとされていましたが現在では総睡眠時間よりも「質」に焦点を当てられる事が多くなりました。
私たちが寝ている時、眼球運動を伴うレム睡眠と眼球運動を伴わないノンレム睡眠が繰り返し出現します。
そしてノンレム睡眠には脳波等の特徴から4つのステージに分類される事が分かっています。
以下に睡眠の質に繋がるノンレム睡眠のステージを見つめていきます。

睡眠の謎

睡眠については、多くの科学者がなぜ眠るのかを考え、研究してきました。

1860年代、ドイツのE・コールシュッターは睡眠の深さを測定する為に、定位置から落とされた振り子の音量によって被験者の覚醒とその時間を記録し、「睡眠深度曲線」を考えました。

1890年代にはロシアのミカエローヴァ・マナセーナが犬の眠りを持続的に奪うと死に至る事を発見し、19世紀末には昼間の覚醒によって疲労物質が脳内で蓄積する「睡眠毒素仮設」が提唱されました。

150年以上も睡眠について研究されており、現代も多くの発見とそれによる改訂が行われておりますが、根本的な謎については今をもっても不明とされます。

【根源的な睡眠の謎】

Q.睡眠の機能は何故あるのか?
全ての動物が眠る理由がどうしてか明らかにされていない

Q.睡眠の調節はどのようにされているのか?
長く起きていると段々眠くなるそのメカニズムは明らかにされていない。

ノンレム睡眠とは

レム睡眠は脳を創り・育てる役割を持っていますが、反対に覚醒した脳を守り・修復する働きを持つ睡眠がノンレム睡眠になります。
静睡眠とも呼ばれ、熟睡に当たる深いノンレム睡眠は脳が高度の統御機構を備えるようになってから開発された眠りと考えらえています。
ノンレム睡眠は胎児期のかなり遅くに出現し、出生後に急激に増えるのが特徴です。その後、最終的には総睡眠量の75~85%を占める睡眠となります。

測定方法

ノンレム睡眠はその深さによって睡眠段階1~4に分かれており、これらは脳波、眼球運動、筋電図の3つの指標を同時に測定する睡眠ポリグラフ記録によって判定する事が出来ます。

 

 

睡眠ポリグラフ記録/脳波・眼球運動・筋電図

 

睡眠段階1

睡眠段階1は、ノンレム睡眠の中で一番浅い睡眠とされており、レム睡眠と類似した脳波が現れる特徴があります。しかし、眼球運動がないという点、椅子に座った状態で過ごせるという点の2つの違いがあります。
この段階の睡眠では様々な脳波が現れる特徴があり、周波数14Hz以上の不規則な低振幅であるベータ波が初期に現れ、終盤になると先端のとがった脳波が頭頂部を中心に多くなります。
睡眠に入る移行期で夢によく似た心理的体験を感じる人が多いとされますが、そのほとんどがこの睡眠段階1で発生しているとされます。
覚醒とは明らかに異なるにも関わらず、音に対しての反応や起こした時に眠ったという睡眠感も乏しいとされます。

・音に対して反応できる
・睡眠感が乏しい

睡眠段階2

睡眠段階2では紡錘波かK複合波が出現し、睡眠段階1で発生する緩徐眼球運動が止まり、呼吸も規則正しく行うようになります。
外部刺激への応答性も低下し、眠ったという睡眠感が多い事から研究者の中ではこの段階からが入眠と考える人も多いとされます。

・外部刺激への応答性が低下
・睡眠感を多く感じる

睡眠段階3

睡眠段階3では周波数0.5~2Hz,振幅75μV以上のデルタ波が判定区間の20%以上を占めるようになります。
波の波形がゆっくりと大きい為、徐波睡眠と呼ばれ、後述する睡眠段階4と類似する点が非常に多い特徴を持ちます。

・外的刺激に対する反応性が著しく低い
・起こそうとしてもなかなか目覚めない

睡眠段階4

睡眠段階4では周波数0.5~2Hz、振幅75μV以上のデルタ波が判定区間の50%以上を占めるようになります。
睡眠段階3と同様な波形を持つ事からも3と4を合わせて徐波睡眠と呼び、外的刺激への応答性や目覚めの悪さなども同じようになります。
起床直後の眠気が強く、作業成績が著しく低下した状態を睡眠慣性と呼びますが、睡眠段階3・4はこの睡眠慣性が強い特徴を持っています。

・外的刺激に対する反応性が著しく低い
・起こそうとしてもなかなか目覚めない

最後に

ノンレム睡眠の睡眠段階1・2を浅睡眠、睡眠段階3・4を深睡眠と呼びます。
深睡眠の多くが睡眠中の前半に多く出現し、最初の約3時間で全体の深睡眠の約80~90%に達すると言われます。
これらをしっかりと出現させる為には日中の覚醒時間が長ければ長いほど良いとされます。

例えば就寝前に軽く睡眠を取った場合、夜にいざ寝ようと思っても寝れない、寝ても寝た気がしないという現象を回避する為には、なるべく覚醒状態を長く保ち夜の睡眠に備えるという方法があります。

その為に、昼寝は長くても15分ほどで切り上げ、夜の睡眠でしっかり深い睡眠を取る事が獲得方法の1つと考えられています。