悪い睡眠とは(中途覚醒・徐波睡眠の低下・疾患のリスク)

米国コロンビア大学やスタンフォード大学の健康調査(2004年疫学調査)によれば睡眠不足によって疾病リスクが高まると報告されました。

いざ寝ようと意気込んで寝てみたものの、実際に入眠するまでに1時間以上も時間がかかったり、しっかり寝ていても翌日に疲れが残っている感じがするなど、現代人の多くが睡眠の質に不安を感じているようです。

7時間睡眠といった「時間の長さが良い睡眠のバロメーター」であると考える風潮は根強く残っておりますが、どうやら時間だけが質を決めているわけではないというのが現代の通説です。

実際の睡眠グラフと共に悪い睡眠にはどのような種類があるのかみていきたいと思います。

【睡眠の質が低下した場合のリスク】

睡眠の質の低下→肥満→糖尿病・高血圧→心筋梗塞や脳梗塞など

眠りのサイクル

レム睡眠とノンレム睡眠は、約80~100分周期で繰り返し現れる特徴を持っています。

これを「睡眠周期(sleep cycle)」といい、約1.5時間の間隔であることから理想的な睡眠は1.5時間の倍数で設定すると気持ちよく起きる事が出来ると一般的に言われます。

しかし、睡眠周期はきっかり1.5時間という訳ではなく、人それぞれで約80~100分という範囲があり、日中の眠気の強さは夜間睡眠の長さに比例するという理由から直接的な根拠はないとされます。

その為、悪い睡眠を探る方法は睡眠時間の長さや1.5時間周期で起きているかではなく、どのような睡眠グラフとなっているのかという「睡眠の深さ」に着目する必要があります。

・睡眠周期は約80~100分
・日中の眠気の強さは夜間睡眠の長さに比例

故に「現在、1.5時間の倍数で眠る事が良いとされる直接的な根拠はない」

①寝つきが悪いパターン

覚醒状態から睡眠状態までの所要時間を入眠潜時」(にゅうみんせんじ)と言いますが、一般的に30分を上回ると寝つきが悪いと判断される傾向があります。

下記の睡眠サイクルをみると1時45分~2時44分まで覚醒となっており、入眠まで1時間近く要する為、睡眠潜時の観点から「寝つきが悪い」と判断されます。

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この場合、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑制されている可能性が考えられ、寝る前のテレビやパソコン、スマートフォンの使用を控える事が解決の鍵になります。

脳下垂体で分泌されるメラトニンは、光(青色光)による影響を受ける事から室内の照明をやや暗くするといった方法や、照明の種類を電球色に変えるといった方法もあります。

【寝つきの悪さを防ぐ方法】

・寝る直前でのディスプレイの使用を控える

・照明の種類を青色光が制限されるタイプに変える(昼光色→電球色) パーソナルトレーニングジム簀子舞/悪い睡眠とは(中途覚醒・徐波睡眠の低下・疾患のリスク)
 

②何度も目が醒めるパターン

以下の睡眠サイクルでは、0時53分以降に2度の覚醒(黄色のライン)を確認できます。

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睡眠中の覚醒は、深い睡眠(=睡眠段階4)を阻害し、睡眠周期の乱れに繋がります。

原因は飲酒や喫煙、夜間の頻尿や精神的なストレスと考えられており、飲酒や喫煙については寝る直前の使用を控える事は勿論ですが、日常的に原因となるものを制限する事で改善が期待できます。

また、頻尿やストレスについては運動習慣を取り入れる事によって改善がみられる為、積極的に取り入れ事も重要になります。

【睡眠中の覚醒を防ぐ方法】

・飲酒や喫煙を控える

・日常的な運動習慣を取り入れる
・ストレスを溜めない生活を心が掛ける

③深い眠りが少ないパターン

以下の睡眠サイクルでは4時27分頃に1度だけ深い睡眠(紫色のライン)が現れ、以後は現れていません。

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一般的に深い睡眠を「徐波睡眠(じょはすいみん)」と呼び、睡眠の前半に集中して現れ、以後数回の周期に渡って出現するとされますが画像の睡眠サイクルでは現れていません。

この睡眠では深い眠りを十分にとる事が出来ない為、日中に強い眠気となって現れ、日中の思考力の低下や活動量の減少を招きます。

考えられる原因として、日中の過ごし方や過剰な昼寝が挙げられます。

平日の夜だとしっかり眠れるが、休日の夜だと眠りにくいといった場合、日中の積極的な活動によって覚醒時間を長くし、身体的な疲労を適度に保つ事で夜間睡眠の深さを出現させる事ができるといわれています。

また、日中の昼寝で長く寝すぎてしまうと深い睡眠を同時に取ってしまい、夜間時の深い睡眠に悪影響を及ぼす事が分かっています。

その為、昼寝であれば20分未満を基準として仮眠を取り、仮眠を取らなくて良い場合は夜間睡眠まで覚醒時間を確保する事が改善方法として挙げられます。

【深い睡眠を出現させる方法】

・運動習慣などで適度な身体的疲労を保つ

・20分以上の仮眠を取らない

最後に

ゲームやテレビ番組、ネット動画やSNSなど私たちの興味をひく娯楽が増え、睡眠時間は年々減少していると言われています。

肉体労働の減少が睡眠時間を減らしているという側面もありますが、以下の表をみるとスマートフォンの平均利用時間の増加が認められ、睡眠との関係が窺えます。

【ネット利用の平均時間(平日)】
全世代(PC)     2014年-30.9分 → 2018年-34.0分
全世代(モバイル) 2014年-50.5分 → 2018年-72.9分

【ネット利用の平均時間(休日)】
全世代(PC)     2014年-28.9分 → 2018年-27.5分
全世代(モバイル) 2014年-68.5分 → 2018年-107.7分

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※引用/主な機器によるインターネット利用時間と行為者率

しかしながら、原因を探るにしても現在の自分がどのような睡眠をとっているのかを知る事は大切な事であり、それには毎日の計測が重量になります。

ウエアラブル端末を使用し、睡眠を小まめに測定し、少しずつ対処をしていく事が睡眠の質を上げる重要な取り組みと言えます。