不足する食物繊維と見直される米

一時期、ご飯を全く食べない健康法が流行り、それは糖質制限ダイエットとして広まりました。

今でも低糖質の食品がブームであり、コンビニやスーパーでは「ロカボ(Low Carbohydrates)」と称してパンやシリアルなど数多く販売されています。

しかし、低糖質が良いという事だけで炭水化物まで抜いてしまう事があってはなりません。

炭水化物の最たる「お米」は私たちの健康を支え、食事の楽しみを作ってきた事は疑うまでもなく、正しい献立の下でしっかりとお米を食べる事が重要とされます。

糖質とは?

「糖質」とは「炭水化物から食物繊維を除いたモノの総称」になり、体や脳を動かす為のエネルギー源となります。

しかし、過剰に取り過ぎると血糖値の上昇を誘発し、中性脂肪に変えて体内に蓄積される事から肥満の原因として敬遠されています。

炊飯された茶碗1杯分の白米には炭水化物が48.2g含まれており、その内糖質が47.8g、食物繊維が0.4g含まれております。

茶碗1杯の炭水化物量

昨今の低糖質制限ダイエットでは、糖質が炭水化物を構成する1つということもあって、「お米自体を食べない」=「健康に良い」という風潮があるようです。

それと併せて玄米や発芽米といった白米ではない穀類がダイエットには良いと喧伝され、糖質制限ダイエットとして広まっているようです。

しかし、茶碗1杯の糖質を比べてみると白米でも玄米でも数グラム程度しか変わらないという事が分かります。

【茶碗一杯(150g)の炭水化物量】

「白米」   48.2g/糖質47.8g・食物繊維0.4g
「玄米」   46.3g/糖質44.5g・食物繊維1.8g
「発芽米」  47.3g/糖質46.3g・食物繊維1.0g
「麦ごはん」 45.6g/糖質43.7g・食物繊維1.9g

不足する栄養素

現代の私たちの生活では、糖質や脂質を取り過ぎているとされる一方でビタミン・ミネラル、食物繊維は不足しているといわれます。

食物繊維が不足する背景を遡ると炭水化物摂取量の低下にあるとされ、1955年の22.5g/日を境に減少し2001年では14.6g/日の摂取量となっています。

2001~2018年まで平均摂取量は一時上昇する時期はあっても凡そ14.0~15.0gとなっており、厚生労働省が推奨する24.0g/日を達成する事が出来ておりません。

食品群別に食物繊維摂取量の内訳をみてみると、穀類からの摂取量が最も多く、次いで野菜類、イモ類、豆類と果実類からの摂取となっています。

これら食物繊維の摂取量が減った背景には生活習慣が深く関与しており、動脈硬化や糖尿病、高血圧症や脂質異常症などの生活習慣病は食生活が強く関わってきます。

食物繊維は整腸効果や血糖値の上昇抑制、血中コレステロールの低下など健康を維持する為には欠かす事の出来ない栄養になり、生活習慣病を予防する観点から1日の食物繊維摂取量をなるべくクリアする献立や食習慣が重要になってきます。

【1日の食物繊維摂取の推奨量】

成人では1日24g以上、できれば1,000kcal当たり14g以上摂取するのが理想とされる。

 

食物繊維の摂取に寄与する食品

食物繊維といえば野菜を連想されますが、実際に私たちが口にする食材の内、食物繊維の摂取に大きく貢献する食材を調べた統計があります。

1999年に発行された日本食物繊維研究会誌によれば、総食物繊維に寄与する食材は1位「精白米」、2位「食パン」、3位「キャベツ」となっており、穀類からの摂取が多いことが分かります。

【食物繊維摂取量に寄与する食品】
1位 精白米   10.3%
2位 食パン   7.2%
3位 キャベツ  4.4%
4位 温州ミカン 4.3%
5位 米味噌   4.1%
※%表記は、各食品から摂取された食物繊維推量の全食物繊維摂取量に対する割合です。

食物繊維の摂取(水溶性・不溶性)

食物繊維が多く摂れる食品と一概に括っても、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が存在し、それぞれで身体に対する貢献も異なります。

水溶性食物繊維の主体となる成分は、イモ類や熟した果実に多い「ペクチン(Pectin)」、海藻類に多い「アルギン酸(Alginate)」、こんにゃくに多い「グルコマンナン(Glucomannan)」があります。

水溶性食物繊維の働きは、糖質の吸収を緩やかにすることから食後の急激な血糖値の上昇を抑え、肥満の予防やインスリン抵抗性の維持に貢献します。

また、吸着性から小腸でコレステロールや胆汁酸と結びつき、体外に排出させる働きを持つ為、肥満の予防に効果があります。

【水溶性食物繊維】
1位 温州みかん 9.3%
2位 ごぼう     7.9%
3位 食パン     7.1%
4位 薄力粉1等  4.8%
5位 ほうれん草 4.5%
※%表記は、各食品から摂取された食物繊維推量の全食物繊維摂取量に対する割合です。
不溶性食物繊維では、大豆やゴボウに多い「セルロース(Cellulose)」、穀類に多い「ヘミセルロース(Hemicellulose)」、ココアや小麦ふすまに多い「リグニン(Lignin)」、きのこ類に多い「キチン(Chitin)」があります。
不溶性食物繊維では、水分を吸収して便の容積を増やす事で大腸が刺激され、排便を促す作用を持ちます。
大腸の内部に便が留まることが少なければ、大腸内部の環境も整いやすく、大腸がんのリスクを減らすと言われています。
【不溶性食物繊維】
1位 精白米  12.7%
2位 食パン  7.3%
3位 キャベツ 5.2%
4位 米味噌  4.9%
5位 玉ねぎ  3.8%
※%表記は、各食品から摂取された食物繊維推量の全食物繊維摂取量に対する割合です。

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お米の種類

世界で作られるお米は大きく3種類に分けられ、私たちが日本で多く食べる米は「ジャポニカ米」といわれる品種になります。

・ジャポニカ米
 長粒と短粒の2種類の形状があり、日本で多く食べられる品種になります。デンプン中のアミロース含有量がインディカ米と比べ低く、アミロペクチン含有量が高い特徴を持っています。

・インディカ米
 長粒と短粒の2種類の形状があり、一般的にタイ米と呼ばれる。粘りが少なく、独特の匂いがある為、ピラフやチャーハンなどに向いている。

・ジャバニカ米
 幅が広く、大粒であり、脱粒性が低い。パエリアやリゾットなどに向いている。

私たちが普段、口にするお米のほとんどがこのジャポニカ米になり、炊くと水分を多く含み、ふんわりと柔らかく艶が出る特徴があります。

米といっても品種による分類から脱穀の状態による分類、色による分類など様々あり、私たちが日本で比較的簡単に購入する事が出来る米を記載致します。

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精白米

一般的に私たちが食するお米になります。

玄米から糠(ぬか)と胚芽(はいが)を除いたものになり、食味が良く、販売されている銘柄も多くあります。

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玄米

稲穂からもみ殻を除去したお米です。

健康食品として認知され、私たちが不足する食物繊維が白米の6倍多く含まれており、ビタミン・ミネラルも豊富です。

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赤米

赤米は、赤色の色素である「タンニン」が含まれる米で味は不味いとされます。

しかし、玄米よりも多くの食物繊維を含み、タンニンは血圧を低下させる効果をもつ事から健康食品として注目されています。

調理方法はそのまま食すると、食味の観点から難易度が高い為、白米やもち米に混ぜて炊くのが一般的です。

黒米

紫色の色素であるアントシアニン系を多く含む米になり、味は美味とされます。

食物繊維やたんぱく質は玄米や赤米よりも多く、ビタミン・ミネラルも豊富な事から健康食品として注目されています。

高い抗酸化作用を持つアントシアニンは視力増強や肝機能の強化があるとされ、「古代米」としての名称でも有名です。

食物繊維含有量(精白米・玄米・赤米・黒米)

4種類の米にはそれぞれ特徴があり、食味は勿論のこと栄養成分にも違いがあります。

以下のグラフからたんぱく質、脂質、食物繊維を調べると、3種類の栄養素全てが黒米に一番多く含まれている事が分かります。

私たちの食物繊維摂取量の内、約10%が米に由来するものであることが分かっており、食物繊維摂取に寄与する食材では1位である事が分かります。

しかしながら私たちが食べる精白米は、玄米や赤米、黒米に比べ食物繊維の量が圧倒的に少なく、主食である米の食物繊維が増えれば、私たちの摂取量も必然的に増加する事が望めます。

つまり、玄米などの他の米を利用する事で食物繊維摂取量の底上げを期待するという事になりますが、食味の観点も考えると精白米にそれ以外の米を上手に合わせる事が肝要になります。

和食と米

米を中心に献立を考えた場合、食事の多くが和食中心となります。

2013年にユネスコ無形文化遺産に和食が登録され、海外の評価として「健康的な食事」と一目置かれています。

海外から見て、米や魚、野菜や山菜といった地域で取れる様々な自然食材をふんだんに使用し、出汁のうま味を上手に利用する事によって動物性油脂が少なくても美味しさを引き出せる事に大きなインパクトがあったといわれています。

恵まれた食文化を生かし、健康に寄与する食を選択する事が本来の食を楽しむ方法に繋がるのかも知れません。

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【引用・参照】
TIGER/お米の栄養がすぐわかる。お米ヘルシー早見表
健康日本21(第二次)分析評価事業/食物繊維摂取量
健康長寿ネット/食物繊維の働きと1日の摂取量
日経ビジネス/なぜ?同じ白米ごはんなのに、いきなり食物繊維増の怪
日本食物繊維研究会誌/食物繊維摂取量に寄与する上位50食品
大塚製薬/不溶性と水溶性、2つの食物繊維をバランスよく摂取する為には?