私達の免疫細胞の数は、およそ2兆個あるといわれ、それら全てが同じ性質を持つものではなく、働く機能や特徴に大きな違いがあります。
昨今、新型コロナウイルスの脅威によって連日に渡って感染者が報告されています。
コロナウイルスに感染した場合、私たちの体内で免疫細胞がどのように働くのか改めて確認していきたいと思います。
感染まで。
コロナウイルスの感染経路はくしゃみなどの飛沫感染、ウイルスが付着した状態で口や鼻を触ることによる接触感染と言われています。
ウイルスは通常、気道から侵入すると気管を覆う線毛と呼ばれる細かい毛の細胞によって体外へ排出されるように働きます。
しかし、ウイルスはこの線毛を搔い潜り、細胞まで侵入してきます。
接触感染…病原体を含む唾液や体液、分泌物を直接または間接的に触れる事による感染
好中球
ウイルスに感染した細胞は増殖をはじめ、自己の遺伝子を増やすように他の細胞に感染を拡大させます。
人体では異常事態に反応しインターフェロン(Interferon)と呼ばれるたんぱく質が分泌されます。
警報物質のインターフェロンは血液中から全身を駆け巡り、我々の自然免疫である好中球(Neutrophil)が体内で産生され、素早くウイルスに感染した細胞まで届きます。
好中球は別名「食細胞」と呼ばれ、感染した細胞ごと自身で取り込み破壊します。
別名「食細胞」と呼ばれ、警報物質によって産生され、感染した細胞ごと取り込んで破壊する自然免疫
引用画像:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%BD%E4%B8%AD%E7%90%83
ORF3b
コロナウイルスの特徴の1つにインターフェロン応答が他のウイルスと比べて顕著に抑制されている事が分かっておりました。
体内に異物が侵入した場合、異常事態としてインターフェロンと呼ばれるたんぱく質が分泌され、他の免疫細胞が異物除去の為に働きます。
コロナウイルスではその反応が抑制されており、その理由は不明でした。
元々インターフェロンは人によって分泌量に違いがあるとされ、特に症状の少ない感染者は分泌量が極端に少ないことが分かっています。
警報物質であるインターフェロンが少なければ、初期の段階で防衛機能として働く好中球がうまく働かずウイルスが多く増殖していきます。
結果、正常な人と比べて2日で1万倍にも増殖し、感染をより多く広げてしまう傾向があるとされます。
しかし、多くの研究の末にORF3bとよばれるたんぱく質に原因があり、インターフェロンの量を約1/10までに下げてしまう事が分っています。
新型コロナウイルス及びSARSウイルスが持っているウイルス遺伝子の1つ。
元々、SARSウイルスのORF3bにはインターフェロン応答を抑制するという事が分かっている。
参照文献:国立研究開発法人 日本医療研究開発機構
樹状細胞
感染から数日経過して咳や発熱、倦怠感が現れます。
体内では樹状細胞(Dendritic cell)がウイルスの情報を自身に取り込み、キラーT細胞へ情報を伝達します。
他の免疫細胞へターゲットの情報を伝え、T細胞を活性化させる働きから抗原提示細胞の一種になります。
キラーT細胞
細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T-cell)とも呼ばれ、受け取った情報をもとに病原体を直接攻撃します。
リンパ球T細胞の一種で、遺物になるウイルス感染細胞を認識して破壊する特徴を持っており、アレルギーはこの細胞傷害性T細胞が過剰に反応する事によるものです。
引用画像:https://ja.wikipedia.org/wiki/T%E7%B4%B0%E8%83%9E
B細胞
免疫機構を担うB細胞(B-cell)は、リンパ球の約20~40%を占め体内に侵入した病原体に対する抗原を産生する働きを持ちます。
1つのB細胞は1種類の抗体しか作ることが出来ない為、抗体遺伝子を組み合わせる事によってさまざまな抗体を作る特徴を持っています。
骨髄内で分化、成熟する事からBone marrowの頭文字をとりB細胞と呼ばれます。
引用画像:https://www.rikengenesis.jp/clonoseq/analysis/index.html
連携する免疫細胞
私達の身体の中では、異物に対して多くの免疫細胞が連携をし合って除去をします。
しかし、体調不良や個人差によってその反応には差があり、コロナウイルスはそれらの弱点を利用して広がっていくとされます。
切り札となるワクチンは大きな効果を挙げておりますが、それ以前に私たちの身体を常に最良の状態に保ち、虚弱することのないよう運動習慣や食習慣の見直しが迫られているのではないでしょうか。